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美学史特殊講義3

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令和2年度以降入学者 美学史特殊講義3
教員名 高橋陽一郎
単位数    2 課程 前期課程 開講区分 文理学部
科目群 哲学専攻
学期 前期 履修区分 選択必修
授業形態 対面授業
Canvas LMSコースID・コース名称 WA0901281 2024美学史特殊講義3(高橋陽一郎・前・火4)
授業概要 今年度は、ショーペンハウアー(Arthur Schopenhauer, 1788-1860)の主著『意志と表象としての世界(Die Welt als Wille und Vorstellung)』正編(1818[1859])を、(ドイツ語原文を適宜参照しつつ)日本語で読解しながら、無意識、狂気、天才(以上、美学的問題)、生の苦悩、退屈、生殖と死、倫理的行為、解脱(以上、倫理的・宗教的問題)等の問題について考える。
 前学期では、その思想の最重要概念である「意志(Wille)」を最初に学び(主著第二巻第17節・第18節)、その後、美学的テーマの一つ「狂気と天才」が論じられる第三巻第36節、さらに「苦悩」「退屈」「生殖と死」「幸福の消極性」等が論じられる第53節から第60節までの読解を予定している(「同苦/同情」(倫理的行為)や「意志の否定」(解脱)については後学期を予定)。
授業のねらい・到達目標 ショーペンハウアーは西欧世界最大のペシミズムの哲学者として知られ、前年度まで二年をかけて読んだニーチェの『悲劇の誕生』成立にも多大の影響を及ぼした。今年度の授業もこうした「生の哲学(Lebensphilosophie)」研究の一環に位置づけられる。
 ショーペンハウアーの主著『意志と表象としての世界』は、世界の本質、人生の本質に関する哲学者自身の認識と考察の集大成であるが、同時に読者を同じ認識に誘うべく、独特の構造をもって書かれた著作でもある。苦悩の根源を欲望(意志)に見出し、そこから解脱する道(美的観照と意志の否定)を説くことで、西欧の<理性主義>と<力の文明>に警鐘を鳴らし、合わせて西欧世界に東洋思想(ウパニシャッド哲学や仏教)の重要性を伝えた。彼のこのような思想がその後の哲学はもとより、藝術(ワーグナー、印象主義、象徴主義、表現主義、シュルレアリスム等)や文学(プルースト、トーマス・マン、森鷗外等)、心理学(フロイト等)に与えた影響は計り知れない。そのアクチュアリティを受講者各自の関心から汲み取り、自己の美学的・倫理学的思索を鍛錬することが本講義の第一の目的である。この目的が、外国語文献を(恣意的にではなく)正確に読解することによって達成されるならば、受講者はテキスト・クリティークの能力獲得という第二の目的も達成することになると思われる。
 なお、前学期は、宗教哲学的な問題を扱う後学期に比べ、美学的問題と実人生の諸問題を検討する比重が大きくなる。
授業の形式 演習
授業の方法 授業の方法:【演習】
①参加者で日本語訳されたテキストを輪読してゆく。必要に応じてドイツ語原典も用意する。毎回次週の予定担当者を決め、予定担当者は担当箇所の内容を要約したり問題を摘出したりする。これに合わせて参加者全員で議論を重ねる。
②学期末に、授業内容と各自の研究課題をリンクさせた内容のレポートを1500字前後で提出いただく。
履修条件 なし
授業計画
1 ショーペンハウアーと『意志と表象としての世界』の概要
【事前学習】参考文献によってショーペンハウアーの基本思想について学ぶ。 (2時間)
【事後学習】担当者が配布したプリントを精読し、ショーペンハウアー哲学の独自性を理解する。 (2時間)
【授業形態】対面授業
2 授業担当者の著作『藝術としての哲学―ショーペンハウアー哲学における矛盾の意味―』第四章を読んでショーペンハウアーの「意志」概念を理解する。
【事前学習】『意志と表象としての世界』(邦訳)の第十七節・十八節を読んでおく。 (2時間)
【事後学習】ショーペンハウアーの「意志」概念について、デカルトやフロイトとの比較をもとに短いレポートを作成する。 (2時間)
【授業形態】対面授業
3 『意志と表象としての世界』第36節:天才論および狂気論の読解(1)
【事前学習】カントの「構想力」概念について調べる (2時間)
【事後学習】「天才」概念ついてノートを作成する。 (2時間)
【授業形態】対面授業
4 『意志と表象としての世界』第36節:天才論および狂気論の読解(2)
【事前学習】フロイトやフーコーによる「狂気」理解を調べてみる。 (2時間)
【事後学習】ショーペンハウアーの「天才」概念についてノートを作成する。 (2時間)
【授業形態】対面授業
5 『意志と表象としての世界』第53節:哲学とは何か
【事前学習】近代哲学の特徴を自分なりにまとめてくる。 (2時間)
【事後学習】講義担当者の著作『藝術としての哲学』のコピー配布部分の復習 (2時間)
【授業形態】対面授業
6 『意志と表象としての世界』第54節:死について、死の恐怖の錯覚について
【事前学習】「死の恐怖」という問題をストア派の著作を中心にまとめてみる。 (2時間)
【事後学習】第54節をまとめる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
7 『意志と表象としての世界』第55節:行為における自由と必然(1)
【事前学習】哲学問題としての「自由と必然」について考え、メモを作成する。 (2時間)
【事後学習】第55節前半の内容をまとめる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
8 『意志と表象としての世界』第55節:行為における自由と必然(2)
【事前学習】カント(『純粋理性批判』)における「自由と必然」という題で小レポートを作成する。 (2時間)
【事後学習】第55節後半の内容をまとめる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
9 『意志と表象としての世界』第56節:生と苦悩について(1)
【事前学習】人間の感受性と苦悩という主題について考察する。 (2時間)
【事後学習】第56節の内容をまとめる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
10 『意志と表象としての世界』第57節:生と苦悩について(2)
【事前学習】苦痛と喜びという主題について考察する。 (2時間)
【事後学習】第57節前半の内容をまとめる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
11 『意志と表象としての世界』第57節:退屈について
【事前学習】「退屈」と「気晴らし」という主題について考察する。 (2時間)
【事後学習】ショーペンハウアーの「退屈」観をハイデガー『形而上学入門』の「退屈」観と比較した小レポートを作成する。 (2時間)
【授業形態】対面授業
12 『意志と表象としての世界』第58節:人間の一生と幸福の消極性について
【事前学習】幸福が人生の本質をなすか否かについて考察する。 (2時間)
【事後学習】第58節前半の内容をまとめる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
13 『意志と表象としての世界』第59節:幸福の消極性とオプティミズム批判、ショーペンハウアーの「地獄」観
【事前学習】ライプニッツの幸福観について調べる。 (2時間)
【事後学習】第59節の内容をまとめる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
14 『意志と表象としての世界』第60節:生殖の意味について
【事前学習】反出生主義の系譜について調べる。 (2時間)
【事後学習】ショーペンハウアー哲学における<生殖の意義>に留意しつつ、第60節の内容をまとめる。 (2時間)
【授業形態】対面授業
15 前学期のまとめ:ペシミズムの表現としての哲学
【事前学習】仏教のペシミズムについて調べ、ショーペンハウアーの思想と比較してみる。 (2時間)
【事後学習】これまでの授業内容を学期末レポートとしてまとめる。 (3時間)
【授業形態】対面授業
その他
教科書 ショーペンハウアー(西尾幹二訳) 『意志と表象としての世界Ⅱ・Ⅲ (中公クラシックス)』 中央公論新社
中公クラシックスの『意志と表象としての世界』はⅠ・Ⅱ・Ⅲの分冊になっており、授業で使用するのはこのうちⅡとⅢであるが、Ⅰも含め全巻揃えておくのが望ましい。ドイツ語原典は講義担当者のほうで準備するが、これも各自で好みの出版社のものを購入しておくと一層好ましい。
参考書 高橋陽一郎 『藝術としての哲学―ショーペンハウアー哲学における矛盾の意味―』 晃洋書房 2016年 第1版
講義担当者の著書の使用箇所はコピーで配布する。
成績評価の方法及び基準 レポート:レポートは求めるテーマと内容、提出状況を見て評価します。(50%)、授業参画度:授業参画度は、出席状況や質問の頻度、議論への参画等によって評価します。(50%)
オフィスアワー 授業終了後に随時行う。

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